編集部より
特別なことをしなくても、会いに行くことが一番の親孝行。
そんな言葉がぴったりのエピソードをご紹介します。
親の笑顔は、子や孫がそばにいる時間に宿るもの。
日常の積み重ねの中で育まれた、優しい親子関係のお話です。
孫を連れて、毎月のように実家へ帰る
私が自分で親孝行だと感じているのは、結婚して二人の子どもに恵まれてから、子どもたちを連れて頻繁に実家へ帰っていることです。
親には子育ての手伝いをしてもらい、むしろ私のほうが助けてもらっているようなものですが、両親にとっては、孫と過ごす時間が何よりの楽しみのようです。
頻度としては月に一度、二泊ほどの滞在。娘が幼稚園に入園するまでは、そんな帰省をずっと続けてきました。
この春からは平日に通園が始まり、以前ほどは行けなくなりましたが、小さいうちにたくさん会わせてあげられたことは、両親にとって大きな喜びだったように思います。
両親にとって、唯一の孫たち
私には弟が二人いますが、三十代と二十代後半の二人はまだ結婚していません。そのため、両親にとって孫は私の子どもたちだけです。
母が「あなたのところの子どもがいてくれて、本当によかった」と笑うたび、胸の奥がじんわりと温かくなります。
孫がいることで、両親の生活にも張りが生まれたのだと感じています。
帰省にかかるのは、ほんの少しの費用だけ
毎回の帰省でかかる費用は、往復のガソリン代が三千円ほど。あとは手土産に千五百円くらい。それくらいの小さな出費です。
実家では食事を用意してもらい、時には洗濯までしてもらうこともあります。そう考えると、むしろ両親に負担をかけてしまっているのかもしれません。
それでも、孫に会えることが両親にとってのご褒美になっているようで、その笑顔を見るたびに「これも立派な親孝行なのかもしれない」と思えるようになりました。
孫の前で見せる、母のやさしい表情
私の母は、私が子どものころはとても厳しい人でした。けれども孫の前ではまるで別人のようです。
声のトーンも柔らかくなり、目じりにやさしい笑い皺が浮かびます。
弟たちと「こんなに甘いおばあちゃんになるなんて想像できなかったね」と話すこともあります。
父も孫を前にすると顔がほころび、何度も「かわいいなあ」とつぶやいています。
そんな両親の姿を見るたびに、この光景を見せられてよかったと思います。
金銭的な贈り物よりも、孫と過ごす時間こそが両親にとっての幸せ。その実感が、今の私の支えになっています。
これからは成長を見せる親孝行を
これまで、実家へ帰るたびに孫との時間をつくることで親孝行をしてきました。これからは、子どもたちが成長していく様子を見せていくことが、新しい形の親孝行になると思っています。
写真を送ったり、運動会や発表会に招待したり。ビデオを撮っておいて、一緒に見る時間をつくったり。
親としては、そんな関わる時間そのものが嬉しいようです。子育てを手伝ってもらいながら、今度は私たちがその喜びを返していく。これからも、そんな温かい循環を続けていきたいと思っています。
編集部あとがき
お金や物ではなく、会うことがいちばんの贈り物。この体験談からは、親孝行の原点ともいえる優しさが伝わってきます。
孫の笑顔が親の心を穏やかにしてくれる。そして、その笑顔を見守る娘もまた、家族の幸せを感じているのかもしれません。
日常の親孝行は、何気ない往復の道のりの中にある。そんな気づきを与えてくれるお話でした。
