🕊️ 編集部より
親孝行と聞くと、何か特別なことをしなければと思ってしまう人も多いのではないでしょうか。けれども、誰かを想う気持ちがある限り、その形はどんなものであっても立派な親孝行です。
今回ご紹介するのは、「日ごろの感謝を家族旅行という形で伝えた」ある女性(30代)のエピソード。三世帯がひとつになった、心温まる体験談です。
きっかけは、いつも助けてくれる義両親への「ありがとう」
夫の両親、そして妹と同居している私たち家族。共働きの私たちにとって、義両親の存在は本当に大きな支えでした。子どもの送り迎えやお守り、ちょっとした体調不良のときの看病まで──。いつも私たちを気にかけ、何かと手を差し伸べてくれる義父母。
感謝の気持ちはいつも胸の中にあったけれど、「ありがとう」をどう形にすればいいのか、ずっと迷っていました。
そんなとき、ふと夫が言いました。「みんなで旅行とか、どうかな?」
その一言に背中を押されるように、私は計画を立てはじめました。
義両親へのお礼を、家族みんなの思い出に変える旅──そう決めた瞬間、胸の奥が少し温かくなったのを覚えています。
初めての三世帯旅行。行き先は「九州・杉乃井ホテル」
行き先に選んだのは、九州の「杉乃井ホテル」。温泉や噴水ショー、バイキング料理などが有名な、家族旅行にぴったりの場所です。
「えっ、本当に行くの?」最初は驚いていた義母も、日が近づくにつれて目を輝かせはじめました。出発の一週間前には、旅行用の服やバッグを買いに出かけ、夜には家でファッションショーまで開催。その姿を見て、思わず笑ってしまいました。
当日は7人乗りの車にぎゅうぎゅう詰め。子どもたちが歌を歌い、妹が笑い転げ、途中のサービスエリアではソフトクリームを分け合う。車の中は、ずっと笑い声で満たされていました。
30年ぶりの水着姿。義母の笑顔が忘れられない
ホテルに着いて最初に向かったのは、温泉併設のプール。「もう泳げるかしら?」と照れながら笑う義母の姿は、どこか少女のようでした。
30年ぶりに水着を着て、孫たちと手をつなぎながら浮かぶ義母。その笑顔を見た瞬間、胸が熱くなりました。義父も「まさかこの歳でプールに入るとはな」と笑いながら、孫たちを抱えて水をかけ合っていました。
プールの水しぶきが光に反射してきらめく中、家族全員の笑い声がホテルの天井に響く──。この光景を忘れることは、きっと一生ないと思います。
噴水ショーとアフリカンサファリ、思い出の詰まった二日間
夜はバイキングでお腹いっぱい食べて、噴水ショーを観賞。ライトアップされた水の柱が音楽に合わせて踊るように動き、義母が「すごいねぇ、テレビでしか見たことないよ!」と歓声を上げていました。
翌日は、家族みんなでアフリカンサファリへ。間近で見るライオンやキリンに、子どもたちはもちろん、義両親も大はしゃぎ。「こんな体験、もう一生ないねぇ」と笑ってくれるその顔を見て、旅の疲れなんて一瞬で吹き飛びました。
出費よりも、心に残った「また行きたい」の一言
今回の旅行は、フェリー代や宿泊費など、すべて私たち夫婦が負担しました。合計でおよそ15万円ほど。決して小さくない金額ですが、「平日だったから少し安く抑えられたし、何よりも価値のある時間になった」と感じています。
義母からは、「こんな旅行、誘ってもらわなかったら一生行けなかった」と言われ、その言葉に思わず涙がこみ上げました。お金で買えるものではない「時間の贈り物」を、ようやく届けられた気がしました。
日常の中にこそ、親孝行の種がある
旅行から戻って数日後、義母は旅行用に買ったワンピースを着て、「これ、また着て出かけたいな」と微笑みました。その笑顔に、私は改めて思いました。
親孝行は、特別な日だけにするものじゃない。夕食を多めに作っておすそ分けすること、買い物帰りにちょっとお菓子を買って渡すこと──そんな小さな積み重ねの中にも、ありがとうの気持ちはちゃんと宿るのだと。
「また行こうね」と笑える日を楽しみに
義両親との旅行は、私たち家族にとって忘れられない思い出になりました。旅先で見たあの笑顔、温泉で聞こえた笑い声。どれも心の中にしっかりと残っています。
今でも義母は、写真を見返しては「またあのホテルに行きたいね」と話します。
次の行き先はまだ決まっていません。でも、九州の空の下で交わしたあの笑顔を思い出すたびに、「またみんなで行こう」という気持ちが自然と湧いてきます。
これからも、形を変えながら「ありがとう」を伝えていきたい。旅行でも、日常でも。家族を想う気持ちこそが、いちばんあたたかい親孝行だと思うのです。
✏️ 編集部あとがき
「親孝行=お金」ではなく、「親孝行=一緒に過ごす時間」。このエピソードには、その本質がやさしく詰まっています。
「ありがとう」を伝えるきっかけは、特別な出来事じゃなくてもいい。日常の中で少し勇気を出して声をかけるだけで、思いがけない笑顔や絆が生まれることを、このお話が教えてくれました。
あなたの「ありがとう」は、どんな形をしていますか? もしかしたら今日、その一歩を踏み出す日なのかもしれません。
コメントを残す